テーパ―腐食とフレッティング

モジュラー関節におけるフレッティングと腐食

モジュラー式股関節形成術におけるテーパ―腐食は、すでに1980-90年代において臨床上の懸念であると認識されていました。メタル・オン・メタル ベアリング、大径ヘッド、モジュラー・ネック等が最新設計のトレンドとなり、インプラント腐食が臨床上の問題として再度浮上しました。再置換術の原因すべての4.2%(参照 Della Valle Craig, AAHKS 2014, 口頭プレゼンテーション)を占めており、重大な結果を招くことも多々あります。

Über uns

出典:股関節形成術におけるモジュラー関節腐食に対するベアリング表面の効果
Selin Munir, Michael B.Cross, Reza Jenabzadeh, Anna Sokolova, Christina Esposito, Dennis Molloy,
William Walter, William Walter, Bernard Zicat – Poster, 25th ISTA 2012, Sydney

A/Prof. William L Walter, Mater Hospital, North Sydney, Australiaの許可を受けて掲載

この問題に関する発表は数多く、テーパ―腐食機序は機械支援のすきま腐食として特徴づけられるという点において、意見が一致しています。一見、基本的にはすきま腐食の問題のようでありますが、機械的なフレッティングと摩耗は、すきま環境との境界となる、原子的に薄い、保護的な酸化層を破壊する原因となります。メタルヘッド(コバルトクロム合金)と、そのペアとなるメタルステム・テーパ―のモジュラー関節において、メタル欠損は一般的に見受けられます。大径メタル・オン・メタル ベアリングテーパ―によく見られる事象ですが、従来型メタル・オン・ポリエチレン コンポーネントにおいても、さらにそれが28mmボールヘッドの場合であっても、メタル欠損は確認されています。

メタル欠損(摩耗と腐食)は多くの因子によって起こります。すなわち、テーパー接合面におけるすきまの寸法と形状のような幾何学的変数や、冶金学的、化学的、電気的、トライボロジー的要素の複雑な相互作用等です。 その他、インプラント時期や大腿骨ネックの曲げ剛性といった因子も、重要変数として認識されてきました。

この問題についての最新の発表は、セラミック・モジュラーヘッド関連と、チタニウム合金アダプタ-・スリーブ付きのセラミック・モジュラーヘッド(BIOLOX®OPTION)関連のものがあります。

機械的要因による接合面劣化
(摩耗、フレッティングとフレッティング摩耗)

摩耗は、相対する表面間で起きる相対運動により発生する、進行性の材質欠損を特徴とする表面損傷、と定義されています。1フレッティングは「負荷のかかった二つの材質間にある接触面が、振動あるいはその他の力による微細な相対運動の影響を受けたため、起こる特別な摩耗のプロセス」と定義されています。(ASTM疲労と破損についてのハンドブック)。複数の著者がこの現象発生に必要な運動の大きさを分析し、1から100μmの間という一般的に非常に低い数値である、と定義してきました。2,3人体内荷重の大きさを考えると、プロテーゼのモジュラー関節はすべて、フレッティングの影響を受け易いということになります。

化学的要因による境界面劣化
(腐食とすきま腐食)

図1: メタル-酸化物-溶液とプロティン分子との境界面において多種の電位差が生じている状態の概略図

L.Gilbert氏のご厚意により掲載

技術者の定義では、腐食とは、構造の目視可能な破壊であり、最終的には機能が失われることです。一方、化学者にとっては、ある環境下の表面に起きる不可逆性の表面反応であり、そのプロセスにおいて表面を形成する材質が消費され、その溶解成分が環境の一部となっていきます。メタルイオンと塩を発生させる電気化学的相互作用による表面劣化とされていて4、メタル材質にのみ当てはまる事象です。金のような貴金属のみが腐食に対し、自己防衛が可能ですが、他の金属や合金はすべて、空気中では酸素と自然に反応して、図1に示されるように、多少なりとも保護的な(不動態)酸化層を形成します。

この酸化膜が破損すると、即座に腐食(イオン放出)が始まり、膜が再形成されるまでそれは続きます。5保護的な酸化膜が再建されるまでの時間を再不動態化時間と言います。メタル成分と酸素量により異なりますが、ミリセカンド単位ほどの時間で6、Ti6Al4Vの場合、およそ60msとなります7

参照

  1. Fretting corrosion testing of modular implant interfaces. ASTM F1875-98, reapproved 2009
  2. Mutoh Y. Mechanism of fretting fatigue. JSME International Journal, 1995; 38(4), 405-415
  3. Bill RC. Review of factors that influence fretting wear. Materials Evaluation Under Fretting Condition, ASTM STP 780, American Society for Testing and Materials, New York, 1982, 165-182
  4. Collier P et al. Corrosion between the components of modular femoral hip prostheses. J Bone Joint Surg-Br1992; 74-B, 511-7
  5. Toni A et al. Clinical advantages and fretting concerns with modular neck total hip prosthesis, The institution of mechanical engineers, International conference “Refining future strategies in total hip replacement”, Transactions Volume two, Session 7-11, 2002
  6. Frangini S, Piconi C. Repassivation rates of surgical implantalloys by rotating disk scratching measurements. Materials and Corrosion, 2001; 52, 372-380
  7. Viceconti M et al. Fretting wear in modular neck hip prosthesis. JBiomed Mater Res 1997; 35-2, 207-216

セラミック・モジュラーヘッドに関するテーパー腐食とフレッティングについての出版物

モジュラー股関節形成術におけるフレッティングと腐食の変化 セラミック大腿骨ヘッドは股関節形成術におけるテーパーのフレッティング腐食を低減するのか?

著者:Steven M. Kurtz PhD, Sevi B. Kocagöz BS, Josa A. Hanzlik MS, Richard J. Underwood PhD, Jeremy L. Gilbert PhD, Daniel W. MacDonald MS, Gwo-Chin Lee MD, Michael A. Mont MD, Matthew J. Kraay MD, Gregg R. Klein MD, Javad Parvizi MD, Clare M. Rimnac PhD

抄録

背景

モジュラー・ヘッドネックテーパーの腐食に関するこれまでの研究は概ね、コバルトクロム(CoCr)合金の大腿骨ヘッドについて行われたものであった。セラミック大腿骨ヘッドを使用した際のヘッドネックテーパー腐食については、合金の研究結果ほど、多くは知られていない。

疑問点/目的

我々が疑問に思ったのは(1)セラミックヘッドを使用した場合、CoCrヘッドと比較してテーパー腐食が低減するのかどうか、(2)いかなる装置因子、患者因子がテーパーのフレッティング腐食に影響を及ぼすのか、(3)セラミックヘッドにおけるテーパーのフレッティング腐食機序とCoCrヘッドの場合の機序は異なるのかどうか、であった。

方法

フレッティングと腐食のエビデンスを求めて、100例の大腿骨ヘッド-ステムのペアを分析した。使用した手法は、テーパー上に確認されたフレッティングと腐食損傷の程度と規模に基づいた、目視スコアリング・テクニックであった。インプラント期間、側方オフセット、ステム設計、曲げ剛性をもとに、50例のセラミック・ヘッドステムのペアと50例のCoCrヘッド-ステムのペアをマッチングさせたコホートを作った。フレッティングと腐食スコアの結果は、セラミックヘッド・コホートにおけるステムの方が低かった(p=0.03)。ステム合金(p=0.004)とより低いステムの曲げ剛性(Spearman's rho=-0.32, p=0.02)はセラミックヘッド・コホートにおけるステムのフレッティングと腐食損傷を予測したが、メタルヘッド・コホートにおいては予測しなかった。機械的支援のすきま腐食機序は両コホートにおいて同様であったが、セラミック大腿骨ヘッドでは、二つの表面の内一つのみ(メタル雄テーパー)において、酸化層の摩耗と再不動態化プロセスが進行中であった。

結論

セラミック大腿骨ヘッドの使用により、モジュラー・ヘッドネックテーパーからのCoCrフレッティングと腐食は軽減される可能性があるが、完全に除去されるわけではない、と結果は示唆している。

臨床関連事項

本研究の知見は、大腿骨テーパー腐食低減の可能性におけるセラミックヘッドの役割について、更なる研究(の必要性)を裏付けるものである。

フレッティング腐食とトラニオン摩耗―スリーブ付きセラミックヘッドにとっても問題となるのか?

著者:Roman Preuss, PhD, Kim Lars Haeussler, Markus Flohr,and Robert M. Streicher, PhD

抄録

大径メタル・オン・メタル関節を持つモジュラーベアリングシステムの中には、モジュラーメタル接合部より生じる腐食とメタル粉により、通常よりも高い再置換率を示す例があった。大径セラミック・オン・セラミックベアリングも存在しており、チタニウム合金のアダプタースリーブを使って、セラミックボールヘッドをステムテーパーに固定している。本研究は、規格に準拠した新設計の実験設備を用いて、大径セラミックベアリングにおけるテーパーフレッティングと腐食の問題に取り組んでいる。大径メタルヘッドがTHA不成功の原因と示されてきたが、メタル・アダプタースリーブまで備えた大径セラミックヘッドが、モジュラーテーパー接合部の腐食に全く影響しないことを、我々の研究結果は実証している。

モジュラー股関節全置換術における腐食:
ヘッド-ネックとステム-スリーブテーパー連結の分析

著者:Selin Munir, BE, MBiomedE, Michael B. Cross, MD, Christina Esposito, PhD, Anna Sokolova, and William L. Walter, MBBS, FRACS, FA OrthA, PhD

抄録

本摘出研究では、S-ROM®摘出インプラントのモジュラー連結を調査して、ヘッド-ネックとステム-スリーブ接合部における腐食規模を測定した。腐食度は、年数を経たベアリング表面材質との関連において、グレード別に分類した。セラミックヘッドと比較して、コバルト-クロムヘッドにおけるヘッド-ネックテーパーの腐食が大きいことが確認された。ステム-スリーブ接合部に関しては、ハード・オン・ソフトベアリングと比較して、ハード・オン・ハードベアリング表面のインプラントにおいて有意に大きな腐食損傷(p<0.05)があった。ベアリング表面材質とヘッドサイズが、モジュラー接合部における腐食量に影響することを、本研究は示唆している。

テーパー角クリアランスはヘッド-ステム接合部におけるフレッティングと腐食損傷に影響するのか?マッチングされたコホートにおける摘出研究

著者:Sevi B.Kocagöz, BS, Richard J. Underwood, PhD, Shiril Sivan, BE, Jeremy L. Gilbert, PhD, Daniel W. MacDonald, MS, JuddS. Day, PhD, and Steven M. Kurtz, PhD

抄録

過去の研究では、モジュラーテーパーの設計が、テーパー表面における腐食と材質消失に影響する可能性があるのではないかと推定されてきた。我々が提示するのは、真円度測定器(Talyrond 585, Taylor Hobson, UK)を使って、摘出された大腿骨ヘッドテーパーとステムトラニオンのテーパー角を測定するという最新の手法である。さらに、50例のセラミック・ヘッド-ステムペアと50例のメタルヘッド-ステムペアから成るマッチング・コホートを調査して、テーパートラニオン接合部におけるテーパー角クリアランスと、目視によるフレッティング-腐食スコアの関係性を研究した。本研究では、セラミックあるいはメタル・コホートのいずれにおいても、テーパー角クリアランスと目視フレッティング-腐食スコアの間に、相関関係は確認されなかった。

  • Fretting and Corrosion at Modular Junctions

    Can ceramics address this clinical issue?

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